群ようこ、角川春樹事務所
☆☆☆
私が大好きな《れんげ荘シリーズ》の第三弾です。今回もとても面白く、一日で読み終わってしまいました。
主人公のキョウコは会社勤めが嫌になって、私は職場の重圧からうつ病になって、と理由こそ違えども20年以上勤めた会社を辞めて無職になったというのが同じなので共感しまくりです。
また、キョウコの物事に対する感じ方が私とそっくりで、
「こんな本が第三巻まで出版されるなんて、案外、私の人生ってメジャーなんじゃないのかしら」
と勘違いしそうになります。
れんげ荘の住人たちも健在で、特にクマガイさんの言葉は今回も胸に刺さります。「ダメな男は(いつまで経っても)ダメ」って話なんか、「そうそう!」って声に出して相槌を打ってしまいました。
そして、今回は今まで影が薄かった職業が旅人のコナツさんにも紙面がさかれていて興味深いものがあります。私が大学生だったときにも、コナツさんのように就職活動せずに自分の好きなことだけやって生きていく道を選んだ人たちが同級生の中に数パーセントいました。そのときは、
「働かないで、どうするんだろう?」
と気になっていたのですが、社会人になってしまうと、こっちは仕事を覚えることに毎日必死で、彼らのことなどスッカリ忘れていました。そんな自由人の代表のようなコナツさんの33歳のリアルが描かれています。
物語の一番最後では、キョウコの母親が倒れて救急車で運ばれ、集中治療室で治療を受ける場面で終わっているのですが、私もここ数年で2度、母に付き添って救急車に乗ったので、
「40代になれば、親の介護もあるよねぇ」
と同志を得た気持ちになりました。会社を辞めれば義務をだいぶ減らせますが、ゼロになるわけじゃないんですよね。人生、死ぬまで悩みは尽きません。