一人目は、小さな小さな出版社で、副編集長をしている山根梨央(30)。副編集長とは名ばかりで、実態は便利屋、雑用係、編集長の不倫相手だったりします。器用なもんだから、上手く立ち回っていたら都合よく使われてストレスが溜まり、ついに爆発、出版社を辞職。
二人目は、小さな小さな工務店である鍵山工務店の社長、鍵山郷子(47)。鍵山工務店は郷子の実家。夫はお婿さん。その夫が社長をしていたんだけど、浮気をしたので夫を追放して、郷子が社長にスライド。しかし、それまで会社のことにタッチしてなかったので、建設業の知識はゼロ。
こんな、人生土壇場みたいな二人が鍵山工務店を舞台に社長と社員という立場で、これからどうするかを模索していくストーリーになっています。
二人は、建設業の素人なので、そもそも、何を頑張ったらイイのか分からず、空回りばかりしているのですが、そんな二人が、
「わかり易い目標みたいなのがあればイイのになぁ、そして、そこに辿り着くとご褒美がもらえるの」
と妄想するのが印象に残りました。学生の頃は、勉強すればまったく無駄になるってことは無かったと思うのです。そりゃ、才能のあるなしが関係しますから、みんなが東大に入学できるわけじゃありませんけど、目標は偏差値を上げることで、そのためには勉強する、と単純だったわけです。
しかし、いざ社会人になってみると上司からは「何とかしろ」みたいな丸投げの命令ばかりで、何から始めたらイイのか分からないことばかりです。でも、これからは、決まりきった作業はAIやロボットがやるようになりますから、不測の事態を何とかするのが人間の仕事になるのでしょうけれど。
ちょっと暗い感想を書いてしまいましたが、エンタメ小説なので、ラストは二人の方向性が決まって、「さぁ、目標に向かってがんばるぞ!」みたいな感じで終わってます。深刻にならずに読み始めて大丈夫です。