書店員の恋

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梅田みか、日経文芸文庫
☆☆☆
社会人になって5~6年経ち、仕事に慣れ、周りを見回す余裕も出来て、責任ある仕事を任されるようになった頃に多くの人たちが感じるようになることをたくさん盛り込んだ小説です。なので主人公と同じ年代か、上の方ならば、読んでいるといたる所で

 

『あるある』

 

と思うこと間違いなしの小説です。

 

主人公の今井翔子は東京の渋谷にある大型書店で働く26歳の書店員です。翔子にはレストランのオーナーシェフになることが夢の恋人、大輔がいます。大輔は有名なレストランで修行して、腕を磨きたいと願っていますが、就職活動は連敗中。仕方なく、ファミレスの厨房でアルバイトするしかない日々に元気がありません。

 

翔子も大輔も、贅沢をしたいワケじゃないけど、夢を実現するためにはお金が必要です。でも、不況の最中、そんな大金を手にできる仕事なんて身の回りにありません。どこもかしこも世の中、行き止まりに感じられて、翔子は閉塞感を感じながら暮らしています。

 

そんなとき、翔子が職場で手掛けたケータイ小説フェアが成功し、そのお礼ということでベストセラー作家と食事する機会に恵まれます。本が好きな翔子ですが、ケータイ小説という新たなジャンルには思い入れがなく、その作家を仕事上で付き合う人物としか見ていなかったのですが、作家から好意を寄せられるようになり、財力がある人間だけが見せられる贅沢で夢のような世界に心が揺れます。

 

夢はあっても、お金もコネもない大輔と大金持ちのベストセラー作家との間で恋と仕事に悩む翔子がどんな選択をするのか、みなさんも一緒に考えてみてはいかがでしょうか?

 

余談です・・・
翔子が東京について語る部分が私の思っていることとピッタリでした。いつの時代、どこの場所でも、生まれ育った場所に不満を持つ人が向かうのは大都市なのですが、そんな方たちが東京に行く前にどんな所か知っておくのに役立つと思い、本文中から引用しておきます。

 

~それにしても、東京で暮らしていると、本当に何かとお金がいる。群馬にいた頃は、こんなに早く千円札はなくならなかった。もちろん、親元にいたせいもあるけど、理由はそれだけではないような気がする。東京という街が、どこもかしこも物であふれかえり、ひと晩じゅう灯りがついていて、いつもお金を使わないといけないような気持ちにさせ、使えない自分がとても貧乏だという思いを植えつける。~

 

東京はキラキラした場所ですが、お金がない人にとっては砂漠にいるのとかわりません。