うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

小美代姐さん花乱万丈

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群ようこ集英社文庫

☆☆☆

大正14年1月に生まれた女の子が、三味線の演奏技術を身につけて芸者になり、途中には戦争の惨禍をくぐり抜け、置屋のお母さん(今でいうところの芸能事務所の社長みたいなもの)になるまでを描いた小説です。

 

生まれつき右手が不自由だったため、小学校に入学すると他の子と同じように出来ないことがあるのですが、そのことを先生が、

 

「なんで出来ないんだ、お前はやる気がないんだ!」

 

と叱るので、すっかり学校が嫌いになり、小学校から上へは進学せず、三味線の稽古に励み、迷うことなく芸者になって働き始めます。

 

厳しい下積み時代、戦争に関係する暗い時代、男運にも恵まれず、つぎつぎと禍(わざわい)が美代子を襲うのですが、根が明るく、湿っぽいことが嫌いで、義理人情に厚い美代子が禍を福へ転じていく痛快なお話になっています。

 

私は現在51歳ですが、これを読んでいて昭和の良さを思いました。もちろん、昭和の時代にも無法者はいて、善良な人はそれに苦しめられていたのですが、令和の時代は無法者に加えて偽善者がコンプライアンスなるものを振りかざして善良な人を縛り上げているじゃありませんか。無法者はコンプライアンスなんて屁とも思ってませんからね、今も彼らはのびのびとのさばっているわけです。そんなわけで、令和の善良な人々は無法者から苦しめられ、偽善者から自由を奪われているわけです。ですから、無法者にさえ気を付けていれば良かった昭和の方が、私は暮らしやすかったと思う次第です。

 

芸者の世界は30歳になると年増と言われるのですが、美代子は宴席を盛り上げるのが上手く、三味線で演奏できる演目が他の芸者を圧倒していたので50歳になっても指名が切れません。美代子は自分と同じように花柳界で生き延びている人は、どんな境遇の時にも芸を磨き、仕事を真面目にやって来た人だけだなと思うようになるのですが、この辺りは芸事で身を立てている人には参考になるんじゃないでしょうか。

 

昔は美代子のように勉強が嫌いでもなれる職業がたくさんありましたが、今は何でもかんでもコンピューターですからね、勉強が嫌いない子供は何を目指して生きていけば良いのか、、、賢い人しか人並みに生きられない現代を憂いているこの頃です。