船に乗れ!

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藤谷治、JIVE
★★★
挫折ばかりで中年になり、金メダルを取ったオリンピック選手が


「努力は必ず報われます」
「がんばれば夢は叶う」


なんて語りかけているのを見て、心を動かされることのなくなった私はこの本を読み終えてとても共感しました。


読み始めて、変わっているなと思ったのは、

 

「これから書かれる物語は既に過去となった出来事です。」

 

と、中年と思われる歳になった主人公が述懐するところから始まることです。

 

主人公は音楽高校に通う男子生徒。音楽は目で見ることは出来ませんし、手で触ることも出来ません。抽象的な芸術です。しかし、そこには確かに演奏する者の優劣があり、主人公たちは様々な思いを抱えながら一流の音楽家を目指して努力を重ねます。


音楽の世界では一流、あるいはもっと現実的な話しで、


《音楽で飯が食える》


と言ったレベルの話しにまで置き換えてもよいのですが、それが叶う人は一握りの才能がある人に許されたことです。なので、登場人物たちの大部分は挫折を味わいます。そして、物語の終盤でかつての高校生たちが中年になって登場します。私はその姿に共感、安心といった感情を持ちました。

 

大部分の人たちは努力してもイチローにもビル・ゲイツにもなれません。夢やぶれて、夢が無くなって、それでも生きている人たちが自分の他にもたくさんいて、自分も生きていていいんだと思えました。


最後に、この本はクラッシック音楽の知識が無くてもまったく苦にならずに読めます。また、音楽高校や音楽大学に通う方々が読んでも共感できる部分がたくさんあると思います。お勧めです!