和菓子のアン

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坂木司、光文社
☆☆☆
読み終わって、あとがきを読んではじめて、

 

『これ、ミステリーだったんだ!』

 

と気付かされた本です。だって、ミステリーというと普通は死体が出てくるじゃないですか?人が死なないミステリーでも、悪意を持った人物が登場しますよね?でも、この物語にはそのどちらも登場しません。

 

主人公は梅本杏子(18)、やりたいことが見つからないまま高校を卒業し、家でブラブラしているのも居心地が悪いので、デパ地下の高級和菓子店でアルバイトをするようになります。杏子は何か得意なことがあるわけでもなく、ぽっちゃり体型で外見にコンプレックスを持った女の子です。ですが、気が利いて、愛嬌があるので周りの人たちを笑顔にしています。

 

この本には5つの謎にまつわるお話が納められているのですが、謎を解く鍵はどれも和菓子にまつわるトリビアになっています。杏子はこの世界で働き始めたばかりなので、和菓子の知識は美人でスタイル抜群な椿店長と和菓子職人志望で見た目はイケメン、心は乙女な立花クンが教えてくれます。

 

あとがきを読むまで、作者のコンセプトに気付かなかったのは、死体も悪意を持った人物も登場しなかったこともありますが、和菓子のトリビアが面白いこと、和菓子の描写が上手で美味しそうに感じたこと、一生懸命に働く杏子の姿に引き込まれたこと、などのために謎解きの場面がなくとも十分に面白い本だったからだと思います。

 

和菓子屋さんを舞台にしたミステリーなんて、他にないような気がします。ミステリーは好きだけど、殺人や暴力的な描写は小説であってもダメって人にオススメです。