sweet aunt

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さとうさくら、宝島社
☆☆☆
高校の卒業を間近にひかえた実花の両親が崖の上でふざけていて転落し、突然亡くなってしまうところから物語がはじまります。実花は家族を亡くし、いきなり独りぼっちです。

 

それまで実花はお洒落で、綺麗で、くだらないことは言わない両親が好きでした。これまで一度も学校の行事に来てくれたことがないのも、フリーで働く両親の仕事が忙しいからと信じていました。ところが両親の死後、衝撃の事実が実花にもたらされます。第一線で活躍していたと思い込んでいた服飾デザイナーのママとプロカメラマンのパパは手芸とカメラが趣味のただのフリーターだったのです。貯金がわずかしかないことも明らかになり、住んでいたアパートから出ていかなければなりません。

 

実花はママの妹(おばさん)に泣きつき、同居の許しを受けて、おばさんと二人で暮らしはじめます。題名に《 sweet 》とあるので、微笑んで実花を迎え入れる優しいおばさんかと思いましたが、これがそうではありません。

 

その日暮らしを満喫していた両親の血を引いた実花はコツコツやることが嫌いです。対照的におばさんは地面に足をしっかりつけた生き方を貫いていて、夢みたいなことは一言も言いません。同居もタダではなく、毎月の食費と光熱費として4万円入れるように言ってきます。

 

それまでフワフワと風船のように生きてきた実花がおばさんとの生活の中で、お金がないと何もできないという現実を受け入れながら、生き方から考え方まで改めていきます。しかし、労働を通じて物を作る喜びや、たくさんの人と協力して作業することの充実感を味わいながら前向きに変化していくので、救いのあるお話になっています。

 

おばさんは厳しいけれど寛容で、けっして悪い人ではないので、暗いお話にはなっていません。おばさんは説教臭いことを言わずに彼女の生き方で実花に世の中を渡っていく心構えを教えてくれます。私にはおばさんが嵐の海に翻弄されている船乗りに進むべき方向を示す灯台のように感じられました。