一條次郎、新潮社
☆☆☆
シュールでナンセンスなスパイ小説です。というか、スパイ小説に分類して良いのか悩みます。
幼いころ、両親が任務遂行中に殉職したため天涯孤独になり、スパイ養成学校に引き取られ、スパイの英才教育を受けたが成績が悪く、成人になってからは諜報機関の建物の清掃員として長く働いた男が主人公です。
しかし、男は諜報機関が自分を秘密兵器として温存していると信じているのです。73歳まで一度もスパイとして働いたことがないのに・・・。
そんな男についに命令が下ります、73歳にして初めてのスパイ活動です。任地はニホーン国の失業率80%の田舎町です。任務は市長の暗殺。
登場するキャラクターはシュールな人ばかりです。大怪我をしても、大事故に巻き込まれても死なないし、会話は浮世離れしています。ですが、ユーモア小説とも違うんですよねぇ。笑いの要素はないので。
男はスパイ活動を続けるうちに町の有名人になり、皆から、
《ゲイでセレブなおかま野郎のトンチキなスパイの暗殺者の人殺しのひとでなしのマネキン狂いのアル中の連続爆弾犯の木の実の王のアフリカン雑種》
と賞賛されるようになるのですが、こんな感じに形容されるスパイに興味がある方だけ読んでください。けっして、ベストセラーになるような本じゃありません。