秋川滝美、アルファポリス
☆☆☆
女店主、美音(30)とその妹の馨(25)が切り盛りする居酒屋《ぼったくり》が舞台の人情物です。
《ぼったくり》とは物騒な屋号ですが、もとからこの名前だったワケではなく、先代の店主(美音の父)が口癖にしていた
「誰でも買えるような酒や、どこの家庭でも出てくるような料理で金を取るうちの店は、もうそれだけでぼったくりだ」
がもとになって、いつしか屋号が《ぼったくり》になったようです。
そうは言っても、実状は明朗会計で美味しいお酒とおつまみを庶民的な価格で提供する居酒屋です。そんな魅力的な居酒屋なので、何人もの常連客がついていて、毎日賑やかに営業しています。客同士も顔なじみで、仕事や家庭のグチを言い合って和やかな雰囲気が漂う素敵なお店です。
下町にある居酒屋らしく、飾らない人々が出入りする居酒屋で、そんな人たちが持ち込んだちょっとした問題を美音とお客さんたちで協力して解決していきます。お客さんの中に、一人、毛色の異なる紳士が登場して、物語のアクセントになっています。美音が気になっているみたいなので、今後、男女の仲になったりするのかもしれないと勘ぐりながら読みました。
作中で登場するお酒やおつまみが美味しそうで、こんな居酒屋が近くにあったら通ってみたいなと思いました。