朝比奈あすか、朝日新聞出版
☆☆☆
ファミリーレストランで働く、20代前半の女性、真由子を主人公にしたお仕事小説です。
《グイグイ読ませる》とか《感動して号泣》とかではないんですけれど、東京の郊外にあるファミリーレストランのリアルな日常が書かれていて、じっくりと読ませる良い本だと思いました。
真由子は複雑な家庭環境で育ったため、早く経済的に自立したくて15歳からファミリーレストランで働き始めます。そして、高校卒業後も同じお店で働き続けるのです。
貧乏な子供時代を過ごした真由子がその当時に、たまに食べさせてもらえるご馳走がファミリーレストランの料理だったので、真由子はファミリーレストランの仕事に愛着があります。だから、真由子は自分のお店で気持ちよく食事をしてもらいたいと本心から思っているのです。
しかし、ファミリーレストランのホール係は、そのほとんどが腰掛のアルバイトです。真由子のように高い職業意識をもって働いている人はいません。そんな中で、ホール係のリーダーになった真由子が苦労しながらお店を回しています。
お客さんのほとんどは、ホール係を料理を運んでくるロボットのように認識しているのですが、常連のお客さんの中には真由子を優秀な接客係と評価して優しく話しかけてくれる人もいるのですが、、、。
過剰な演出がない、地に足のついた小説です。若い女性が主人公なのにキラキラした要素がないため、テレビドラマの原作にはなりませんが、52歳の私はこんな小説の方が今は好きですね。世の中はエリートだけで回しているわけじゃありません。真由子のような普通の人がまじめに働いているおかげで回っているんです。