桂望実、幻冬舎
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私は、充実した人生を送るためには【努力】、【才能】、【運】がバランスよく必要だと思っています。【才能】と【運】については天からの授かりもので、人の意志ではどうにもなりません。
多くの方は、このことで一度は
『世の中、不平等なことばかりだ』
と思ったことがあるんじゃないでしょか?
この物語は、そんな思いを持った人たちがどうしたら社会を平等に運営できるか考えて、運営している《鷹の島》で生まれ育った青年、芦田耕太郎(33)の物語です。
《鷹の島》は人口約1千5百人の島です。島では不平等が起こらないように細心の注意が払われています。学校ではテストの点数で優劣がつかないように点数はつけません。職業は抽選によって決められ、四年ごとに転職することで、特権階級が生まれないようにしています。
耕太郎はそんな島で、勧誘係という職業についています。《鷹の島》では人口を維持するために、本土からの移住希望者を受け入れているのですが、希望者が多いため勧誘係が身辺調査をして、善良な人だけを受け入れているのです。
身辺調査で問題がなければ、耕太郎が移住希望者に接触し、島への移住を持ちかけるのですが、ここで様々なドラマが起こります。
耕太郎は《鷹の島》をユートピアだと信じているのですが、皆さんだったら《鷹の島》へ移住を勧められたらどうしますか?物語の中では、喜んで移住する人と断る人が登場します。喜ぶ人に理由があるように、断る人にもちゃんと理由があって、
『全ての人が平等に扱われる社会は幸せか?』
ということを考えさせられます。
耕太郎が本土で出会ったバーテンに、もしも理想社会への移住を勧められたらどうするかと尋ねたところ、断られるのですが、名言なので以下に紹介します。
「完璧な理想社会には、バーテンは必要ないからですよ。不満のあるところに酒が必要です。その酒のあるところにバーテンが必要です。完璧な社会で、不満も不安もなければ、バーテンの居場所がありません。」
あなたなら、人間が完璧に平等に扱われる理想社会に移住を勧められたらどうしますか?耕太郎と一緒に考えてみてはどうでしょう?