うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

ABC!曙第二中学校放送部

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市川朔久子、講談社
☆☆☆
中学校を舞台にした爽やかな青春小説を探している方に、ぜひお勧めしたい本です。

 

漢字の大部分に送り仮名がふってあるので、児童書として書かれたと思うのですが、大人が読んでも十分楽しめる内容になっています。

 

先輩たちが卒業して、新三年生二人だけになってしまった曙第二中学校放送部、
Akebono Broadcasting Club
頭文字をとって、ABCの一年間にわたる活動の様子が描かれています。

 

主人公は本庄みさと。バスケ部で居場所がなくなって退部したのですが、帰宅部だと内申書が悪くなってしまうので、なんとなく入った部活が放送部でした。

 

もう一人は、音響機器を操作するのが好きで、一年生から入部している古場和人。和人は人前で喋るのが苦手なので、アナウンサーは自動的にみさとの役目になってしまいます。

 

そんな二人で始まった新学期です、活動が盛り上がるはずもなく、そもそも何をしたら放送部らしくなるのかすら分かりません。

 

そこへ知識はないけれど、やる気だけはある新任の須貝先生が加わって、手探りで放送部を一から作っていくのです。

 

活動が活発になるにつれて人も集まってきます。ワケありで転校してきた感じのする美少女、真野葉月。体を故障して野球部を辞めた新納。そして、唯一の一年生、小島珠子。総勢5名で放送部のコンクール出場を目標に活動が加速していきます。

 

失敗もするし、意見が対立することもあるし、無理解な生徒指導の先生から理不尽な要求を突き付けられるし、と障害は絶えないのですが、それらを乗り越えながら放送部員たちは一年間を共に過ごすのです。読み終わったあと、きっと爽快な気分になれるはずです。

 

私の卒業した高校の卓球部は、下手な新三年生をクビにする伝統がありました。私も春休みになる直前に顧問の先生からクビを通告されて辞めたのですが、それまで朝7時には体育館で練習を始め、夕方18時まで練習していた生活から突然、帰宅部になると時間を持て余してしまい、退屈でしかたなくなってしまいました。

 

そんなときに、友達から誘われて写真部に入部したのですが、入部してまず驚いたことは、運動部には必ずあるカーストがないことでした。このことは私にとってとても快適で、それまで暗黒だった高校生活が最後の一年で救われたと思っています。

 

そのために、この物語の主人公みさとがバスケ部の人間関係に疲れて退部し、その後、偶然の出会いから放送部で自分の居場所を見つけて行くストーリーにどっぷりと感情移入してしまいました。

 

だから、このブログを読んでくれた中高生の中に運動部で居場所が見つけられなかった人がいるなら、それで学生生活が終わったように考えず、みさとのように文化部に挑戦してみて欲しいです。素敵な出逢いが待っているかもしれません。