私にふさわしいホテル

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柚木麻子、新潮文庫
☆☆☆
本の表紙と題名から、ホテルを舞台にしたドタバタ劇かと思って読み始めたのですが違いました。

 

小説家にどうしてもなりたい中島加代子(30代前半)が、理不尽な出版業界を相手に手段を選ばず戦う姿をコミカルに描いた物語です。

 

【手段を選ばず】なんて書くと、加代子が悪者扱いされそうなので断っておきますが、登場する編集者や文学賞の選考委員になるような大御所作家たちには

 

「新人作家を発掘したい」
とか
「新人作家を育てたい」

 

なんて考えている人は一人も登場しません。いつでも損得勘定で行動を決める人たちばかりです。うっかり、彼らの甘言に気を許そうものなら骨の髄までしゃぶられて、使い捨てにされる世界なのです。

 

加代子は必死に知恵を働かせて実行し、ときには反撃にあって潰されます。それでも再び立ち上がり、ファイティングポーズをとり続けます。それなのに、作家という職業は孤独な職業で、これらの戦闘中に加代子をサポートする人は誰も登場しません。その孤独な闘いは、私にランボーシルベスター・スタローンが主演の映画)を連想させました。

 

たくさんの人たちの欲望が渦巻く出版業界で、加代子が夢を邪魔する奴らを片っ端から蹴散らしていく姿が痛快な物語です。

 

余談です。
作中の文学賞の選考で思ったことです。100m競争みたいに分かりやすい競争ばかりなら世の中単純でイイのですが、現実社会はそうではありません。

 

【人が人を評価するのは難しい】

 

昔も、今も、これから先も、ず~っと人を悩ます問題ですね。