加納朋子、講談社
☆☆☆
小学生を主人公にした物語では、たいてい主人公はクラスで目立たない子が多いような気がするのですが、この物語の主人公は無鉄砲で、言いたいことはハッキリ口にする元気な男の子です。
小学5年生の高見森(たかみしん)は父親の転勤で東京から北九州へ引っ越すことになりました。住むことになった所は大きな会社の企業城下町で、広い土地に社宅が広がる地域でした。そのため、通う小学校の生徒はほとんど社宅の子ばかりです。
転校した学校では初日から木に登って体育館の屋根に上がり、周りの子たちを驚かせ、先生に叱られるのですが、森はそこからたくさんの社宅の屋根をキャンバスにして描かれた猿の地上絵を見つけて、誰がこんなことをやったのか興味を持ちます。
その猿の地上絵を描いたのは社宅の子供たちから《パック》と呼ばれる男の子なのですが、とてもミステリアスな子供です。神出鬼没で学校に通っているのか、そもそもどこの家の子供なのかも分かりません。そして、森いがいの子供たちはパックのことで秘密を共有しているようです。
無鉄砲な森と神出鬼没のパックが出会って悪巧みを企みます。そして、ラストにはパックの秘密も明かされます。
パックは小学生たちの憧れの姿なんでしょうね。大人の私でもこんな生き方ができたらイイななんて思いました。