森淳一、メディアファクトリー
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テルは子供の時に頭を強くぶつけて物覚えが悪くなってしまい、複雑な仕事が出来なくなってしまったのでいくつもの仕事を転々とし、今はコインランドリーで洗濯物が盗まれないように見張る仕事をしています。
水絵はいつも心が満たされないことに悩まされ、心のすき間を埋めるために万引きを繰り返し、警察に捕まってしまいます。それがきっかけとなって自殺未遂をして、憔悴した姿でコインランドリーにやって来ます。
こんな二人がコインランドリーで出会って始まる物語です。物語の冒頭で、テルのお婆さんが言う言葉が物語の内容を象徴しているように思えるので紹介します。
『世の中にはうまくいく人とうまくいかない人がいる。それは神様が決めたことで、夏が暑くて冬が寒いのと同じようにどうすることもできない。どうすることもできないことは受け入れるしかない。』
もちろん二人は【うまくいかない人】なのです。そんな二人が、たくさんのうまくいかない日々の中で稀に訪れる幸運に希望を感じて生きていきます。
記憶障害があるために傷つくことがあっても忘れてしまうテルと、傷つくことを恐れて生きる水絵が自分らしい生き方をさがす物語です。