秋川滝美、講談社
☆☆☆
大手百貨店グループの重役が、地方都市にあるデパートの業績回復に取り組むお話です。
本のタイトルから、美味しい料理がストーリーに関わってくるものだと思っていましたが、そんなことはありませんでした。食事のシーンはありますが、一般的なお仕事小説で描かれるレベルであって、なぜ、【幸腹】なんてひねったタイトルをわざわざ付けたのか疑問になりました。
物語の始まりではやる気がなかったデパートの従業員たちが、物語の終盤ではやる気を出して頑張るのですが、重役が部下に対して積極的に働きかけたわけではありません。それどころか重役本人が、
『なんで、やる気になったんだろう?』
と戸惑うくらいなので、これでは読者はもっと置いてけぼりです。物語には起承転結が大事と言われますが、この本は【起結】だけで、【承転】がないのです。
地方都市のデパートが左前になってしまう理由が重役のボヤキとして書かれているのですが、新聞を読んでいる人ならば知っていることばかりで新鮮味はありませんでした。
グルメ小説ではないし、かと言ってお仕事小説としても物足りない内容です。