住野よる、双葉社
☆☆☆
私は、本のタイトルからずっと勘違いをしてました。猟奇的な殺人を扱った小説だと思っていたのです。
女子高校生の山内桜良(さくら)は膵臓(すいぞう)を不治の病に侵され、余命1年と宣告されます。桜良は悲嘆して泣きますが、余命を精一杯生きることに決めます。
死の間際まで友達と普通の日常を過ごしたいと願った桜良は家族以外の人に病気を秘密にすることにします。そして、病気と闘うのではなく、病気と共に生きるという意味を込めて、【共病文庫】という題名をつけた日記をつけ始めます。
そして、主人公の登場です。作者は意図的に主人公の名前を記載せずに物語が進行するので、ここでは【彼】とします。同じクラスの彼は、桜良が秘密にしていた病気のことを偶然読んだ共病文庫によって知ってしまいます。そこから、桜良と彼の物語が始まるのです。
桜良は明るく活発で目立つ存在で、クラスの人気者です。彼によればクラスの女子の中で三番目に可愛いそうです。反対に彼は、クラスで一番目立たない存在で、友達もいません。こんな正反対の性質を持った高校生カップルが、桜良の最後の時がくるまで一緒に過ごすのです。
不治の病に侵された少女の物語は、たくさん生産されているので、作者も差別化をはかるために大変だったと想像します。私は、予想を上回って面白いと感じました。もちろん、桜良が死んでしまう場面では重苦しいシーンになるのですが、全体的にユーモアが散りばめられており、笑ってしまうシーンが沢山あります。また、ラストは爽快感さえ感じさせるのです。
生と死を考えさせるような重たい小説ではありませんから、深刻にならずに読み始めて大丈夫です。