富安陽子、新潮文庫
☆☆☆
小学3年生くらいから読むことが出来る児童書で、【となりのトトロ】みたいに日常の生活の中で不思議な体験をするファンタジー小説です。
一見すると普通の家族に見える信田家ですが、誰にも言えない秘密があります。それは、ママが狐だということです。人間のパパと狐のママが恋をして結婚し、ユイ(小学5年生)、タクミ(小学3年生)、モエ(3歳)が生まれました。
子供たちはママが本当は狐だということを知っていますが、まったく気にしていません。それどころか、優しくて強いママが大好きです。ママの人柄を簡潔に説明した箇所があるので引用します。
『ママは背が高くて、どちらかといえばがっしりとしている。いきいきとした目には、いまにも笑いだしそうなかがやきと、どんなことにもへこたれないファイトがあふれていた。くちびるは、いつもほほえんでいるように両はしがちょっともちあがっている。学校の参観日でも、街への買いものに出かけるときでも、ママのまわりは、そこだけが特別な光につつまれているように、明るくゆかいなふんいきになる。』
新月の夜になるとママは人間に化けることが出来なくなってしまうので、山へ行って姿を隠します。なので、子供たちは狐の姿をしたママを見たことはありませんが、ママのお父さんや親せきはそんなことお構いなしです。狐の姿のまま家に上がり込んでテレビを見たり、竜の子供を連れてきたり、不思議な力が宿った石をこっそり置いて行ったり、と信田家に迷惑ばかり持ち込むのです。
いくつもの災難に見舞われる信田家ですが、ファイトあふれるママ、細かいことを気にしないパパ、そしてママから受け継いだ狐の力を身に着けた子供たちが協力して災難を解決していきます。
大人が読んでも楽しい本なので、たくさんの人に読んでもらいたいです。