うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

魔法使いクラブ

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青山七恵幻冬舎文庫
☆☆☆
主人公である角来結仁(かくらいゆに)の、十歳から十七歳までの八年間を、小学四年生、中学二年生、高校三年生の三つの時期で切り取って描いています。

 

結仁には葵と史人という幼なじみがいます。結仁は三人でいるときには一番元気なのに、クラスでは上手にしゃべれない、そんな女の子です。小学四年生の時にこの三人が、まるで秘密結社でも作るようにして結成したのが、【魔法使いクラブ】です。三人は結成に際して誓約書を書いてそれを三等分し、所持することにします。誓約書には

 

『三人の願いが叶うまで魔法使いクラブをやめてはいけない。』

 

と書かれていました。このとき、私には三人の友情はいつまでも続くように感じたのですが・・・。

 

小学四年生のとき、結仁はクラス行事で些細なことから、クラスの仲間から異物として見られるようになってしまいます。子供の無邪気さはときに残酷にもなります。それまで、仲良くしてくれていた友達が手のひらを反すように、結仁を仲間外れにする姿は結仁に人間とはどんなものか、心に深く刻み付けることとなってしまったようです。

 

中学二年生になった結仁はクラスに馴染むことができないというか、積極的に関わらない女の子になっていました。対照的に葵は陸上部で青春を謳歌しているように見えます。史人はそんな二人を一歩引いた所から優しく見守っているという感じです。幼なじみであることから、普通ならば相いれない結仁と葵が交流を続けてこれたわけですが、魔法使いクラブの運営を巡って二人は対立し、絶交してしまいます。

 

高校三年生になって、結仁を取り巻く環境はさらに悪化しています。家族はバラバラになり、結仁は好きでもない男のアパートに転がり込んでいます。葵は付き合っていた男の子供を妊娠し、史人はかつての魔法使いクラブの誓いを守って、こんな風になってしまった二人を助けようともがいています。

 

文庫本の表紙の裏には紹介文として、

 

《揺れ動く少女の心と自立の物語》

 

とありますが、最後まで読んで、これを自立というなら私は悲しいなと思いました。

 

人間の醜悪な面を見てしまったことで、社会にうまく適合できなくなってしまった人っていると思います。しかし、多くの人はそれでも我慢して周りに合わせ、ときどき趣味やお酒で気分転換しながら社会と折り合いをつけていくわけですが、結仁は成長するにつれ、どんどん社会に適合しない人間になってしまいます。純粋すぎて他人ばかりか、自分までも傷つけてしまう結仁を私は痛々しく感じました。私は結仁の未来に救いがあることを願いながら本を閉じました。