うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

よっつ屋根の下

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大崎梢、光文社

☆☆☆

父、母、長男、長女の4人家族の約10年間を描いた物語です。

 

お父さんは内科医です。東京の大病院に勤務していたのですが、病院内の不祥事について内部告発したことにより、報復人事で千葉県銚子市にある病院へ左遷されます。

 

お母さんは東京生まれ、東京育ち、裕福な家庭で育ち、お金の苦労を生まれてから一度もしたことがないお嬢様だったため、一緒に地方へ行くことを拒否します。

 

長男はお父さんと銚子へ、長女はお母さんと東京に残ります。こうして、家族がバラバラになったところで物語スタートです。

 

4人の中で一番大変そうだったのは長男のように思いました。小学校6年生の男の子が、白金にある高級マンションから安いことが取柄のアパートへ引っ越し、海とキャベツ畑しかない土地で暮らしていく姿は、外国で生活を始めるくらいのインパクトがありそうです。

 

一番被害が少なかったのは長女です。お父さんはお母さんに生活費をきちんと送金していたため経済的不安はまったくなかったし、住むところ、学校など何も変わらなかったからです。唯一、正しいことをしたお父さんについて行くことができなかった、ということを後悔し続けたことくらいです。

 

こんなことがあると可哀そうなのは子供ですね。大人は自分の意志で選択した結果を受け入れてますが、子供は降りかかる災難を受け止めるだけですから。

 

10数年後、長男、長女が大学進学とともに一人暮らしを始めたため、家族はさらにバラバラになって、《4つの屋根の下》になるのですが、こんな家族の形もありかな、と思いました。まぁ、それを可能にする経済力があっての話ですけれど。

 

人は根本的には分かり合えない、感じ方は人それぞれ、その現実を土台にして、それでどうするという回答を示した物語です。