橋部敦子、角川文庫
☆☆☆
中村秀雄は進学高校の生物教師です。自分の寿命は80くらいだろうと漠然と考えて28年生きてきました。
長い人生なんだから、無茶や無理をせず、仕事は無難にこなし、保険に入ったり、コツコツ貯金をしたりして生きてきました。
ところが、健康診断でガンが見つかり、医師から余命宣告を受けてしまいます。残された時間は1年。
これまでの人生を後悔した秀雄は、残りの時間を精一杯生きようと決意します。今日できることは明日に先送りしないと誓い、憧れのみどり先生に思いを告げたり、生徒たちに積極的に関わっていきます。
それまで、どちらかというと「つまらない男」、「退屈な男」と周囲から思われていた秀雄ですが、この変化にみどり先生→同僚の先生たち→生徒たち、の順に気づいて影響されていきます。
主人公はもちろん秀雄なんですが、特別重要なキャラクターはみどり先生です。そのみどり先生が秀雄の病気を知るのは物語がちょうど中盤に差し掛かった所です。ここから、秀雄とみどり先生の愛の物語が始まります。
結末が分っていても、秀雄とみどり先生の新婚生活を読む価値があります。胸が熱くなって、涙を流したい人にお勧めの物語です。