山本幸久、光文社
☆☆☆
牛丼の吉野家のようなスタイルで、他人丼を食べさせる【友々家】という飲食店が舞台になったお話です。7つの章からなっていて、それぞれに違う店長が主人公として登場します。
この本を読んだ感想を短くまとめると、
「人生色々」
ということにつきます。
小学生のころから、ずっと吉野家の店長になりたくて、大人になって夢がかなって吉野家の店長として喜びを感じながら働いている人もいると思います。しかし、この物語に登場する店長たちは世間を渡り歩いたあとに、【友々家】に辿り着いた人たちばかりです。
仕事はアルバイトでもお店を回せるように一から十までマニュアル化されているので、創意工夫の余地などありません。並盛一杯を売って290円です。そんなお店で、今日生きるために働く7人が主人公です。なので、キラキラした《お仕事小説》をご期待の方々は残念でした。
色々な理由で【友々家】の店長になった人たちが、働く中で色々なことを体験し、感じていきます。彼、彼女たちが体験することの9割は嫌なことなのですが、残り1割の嬉しい出来事をより所にして日常を乗り越えていっているといった感じです。
どの章も、前半で店長たちの仕事の大変さを描いて、最後にちょっとイイことがあって、読者に
「世の中、捨てたもんじゃないな」
と思わせて終わる構成になっています。
長く生きていれば、順風満帆なんて人は滅多にいるもんじゃありませんから、多くの人から共感が得られるお話じゃないかと思いました。