池田達也、百万年書房
☆☆☆
絶対にサラリーマンになりたくない人は必見の本です。
サラリーマンになりたくない作者が冗談でなく本当に死ぬほど悩んで、大学卒業後の進路に自営業を選び、喫茶店のオーナーになって壁にぶつかりながら経営していくノンフィクションです。
小さくて、パッとしない喫茶店を開くまでの具体的なことが全て書いてあるので、作者と同じような悩みを持っている人には強く推薦します。
まず、最初に立ちはだかるのがお金の問題です。見積もりの結果、百万円必要なことが分かるのですが、アルバイトだけでは大学卒業までに間に合わないため、ネットでパトロンを探すことにします。すると、【ポーン】と百万円くれる人が見つかるんです!これが、奇跡1です。
次に協力者です。作者は料理が好きとか、有名料理店で修業したとかではなく、
《サラリーマンになりたくない》
の1点で喫茶店を始めるので、喫茶店を経営するスキルはゼロです。協力者が必要です。ところが、これも喫茶店開業に向けての様子をネットで情報発信していたところ、
《無給でイイから働かせてほしい》
と申し出があり、面接してみると真面目な若い女性で、作者よりも真剣に喫茶店の将来を考えてくれていることが分かり、その場で採用!この女性は、その後、喫茶店の経営が軌道にのってから作者の奥様になります。奇跡2です。
こんな風に書いてしまうと、
「なんだ、ただの運がイイ奴じゃん」
となってしまいそうですが、個人経営の店舗が長続きするために大事なことは、オーナーがいつでも機嫌よくいること、なんてことを説明するくだりは、運だけの人間とも言えません。チェーンストアばかりになってしまった昨今、オーナーの人柄に惹かれて通う店ってありませんよね。
あと、作者が日本一有名な自称ニートの有名ブロガーphaさんに憧れながらも、自分にはムリと断念する一幕があるのですが、私もこれに賛同しました。
phaさんが有名ブロガーになれたのは、【京都大学卒業】というブランドがあったからですよね。もしも、Fランク大学の卒業生がphaさんと同じことをネットで発信しても誰も読みません。この辺り、この本の作者も自分がphaさんと同じことをしても、誰も自分にお金を払わないとスグに諦めています。
世の中が、どんどんシステマチックになって、企業の部品になれない人間は貧困に落ちていく昨今、普通の人でも企業の交換可能な部品にならずに生きていくことができるか挑戦した画期的なノンフィクションです。