平安寿子、新潮社
☆☆☆
アラサー女子の山守未紀が、12年勤めた会社を辞めて、喫茶店の経営を始めるお話です。なので、物語の前半が《サラリーマンあるある》で、後半が《喫茶店のオーナーあるある》になっています。
よっぽどやりたいコトがある人以外は、居心地の良い会社を辞めようなんて思いませんから、未紀も色々あって会社を辞めることになります。私はサラリーマンとして働くってことは、お金のために理不尽なことに耐えることと思っているのですが、私のように考えている方なら、
『こういうことってあるよねぇ』
とサラリーマン時代の未紀に共感できると思います。普段なら、耐えられた理不尽だったかもしれなかったのですが、その当時の未紀は、結婚を意識して付き合っていた男から思いがけず告げられた別れによる失意と重なって、プッツリと糸が切れてしまいます。
やけっぱちで踏み出した喫茶店開業ですが、飲食業で働いた経験がない未紀は失敗の連続です。開業資金の調達、出店場所の確保、お店の内装作り、飲み物、料理、従業員の募集、食材の仕入れ、初めての接客、光熱費と家賃の支払い・・・、やらなければならないこと、改善しなければならないことが次々と襲ってきて、未紀は息つく暇もありません。喫茶店経営がとてもスリリングに感じられます。
ページ数にすると200ページちょっとの短いお話で、どんどん事件が起こるので最後まで飽きることなく読むことが出来ます。ラストで、未紀が前向きな気持ちで終わっているので読後感も良く、お勧めできる本です。