水月郁見、朝日ノベルズ
☆☆☆
素人が趣味で書いたようなライトノベルです。
タイトルに《図書委員》とあるため、私は【ビブリア古書堂の事件手帖】のような、本から得た知識を使って、敵と戦うお話かと思って読み始めましたが、そんなシーンは全くありません。図書委員であることはストーリーとまったく関係なく、クラス委員でも園芸委員でも同じお話が書けます。こんな中身と少しも関係ないタイトルにした作者あるいは編集者のセンスの無さが残念です。
物語の冒頭で、主人公の女子高生が自殺の準備をするのですが、無駄に長いです。こちらはストーリーと関係あることが出てくるものと思って集中して読んでいるのですが、読み終わってみると文字の大半はストーリーと関係ない脱線した話で、読後に疲労感をおぼえました。宇宙人との出会いのためだけのシーンならもっと短くまとめるべきです。
作者の社会への偏見を盛り込みすぎです。作者は大企業や警察へ偏見を持っておられるようですが、お話に盛り込みすぎていて、ストーリーのテンポが悪くなっています。悪役の描写も重要ですが、物語の流れを妨げない程度にしましょう。
ひねりが無さすぎです。宇宙人と偶然知り合いになって、現代の地球人が持っている技術をはるかに超える技術を手に入れ、圧倒的な力で悪者をねじ伏せる、というお話自体はイイのですが、主要キャラは主人公と宇宙人の2人だけで、魅力的なサブキャラが1人もいません。主人公にも魅力がなく、【優等生だけど、ドジッ娘】みたいな工夫がありません。伏線も一つしかなく、宇宙人の超技術を手に入れてからは一方的に悪者をやっつけるだけで退屈です。技術の習得に苦労するとか、強敵が現れるとか、工夫しましょう。
本をたくさん読んでいると、ときおり、
『なんでこんな本が商業ベースで流通しているんだろう?』
と不思議な気持ちになることがありますが、この本がまさにそれです。