阿久井真、小学館
☆☆☆
3巻になって、いよいよオーケストラ部らしいお話になってきました。今回はオケのメンバーを決めるオーディションがメインになっています。
舞台になっている高校は、生徒が2千人を超えるマンモス校のため、オケ部も部員がたくさんいるみたいで、全員が舞台に上がれるわけではないようです。下手な子は舞台に上がるために、上手な子はオケでの序列を一つでも上げるために必死に練習しています。
こういう、ピリピリしたムードになってくると、演奏技術以外の方法で他人を蹴落とそうとする輩がでてきがちですが、一人も登場しなかったのが良かったです。私は、パワハラでうつ病になって公務員を辞めたので、そういうお話は、たとえマンガでも嫌なんです。
オケは、肩が触れ合うくらいの人口密度で長時間練習を続けるわけですから、ストレスが溜まるのが当たり前です。そのため、セカンドバイオリンで内乱が勃発するのですが、パートリーダーが上手におさめていたのが素敵でした。
パートリーダーには、その他大勢を黙らせる技術が必要なのは言うまでもないのですが、チームをまとめる人格も備わっていないと、本番を迎える前にオケが空中分解なんてことにもなりかねないのです。これは、人間の集団すべてに言えることですね。
このマンガをオケに興味がない人が買うとも思えないのですが、主人公がライバルから、
「譜面をめくって」
と言われる夢を見て、飛び起きるシーンに何の注釈もなかったので解説しておきます。
オケの席は序列によって決まっています。バイオリンは一つの楽譜を二人で見るのですが、上手な方は演奏だけに集中し、下手な方は演奏しながら楽譜をめくる仕事もします。この場合の上手な方を【おもて】、下手な方を【うら】と言います。つまり、主人公は自分がオーディションでライバルに負けた悪夢を見たのです。
オケの本番しか見てないと、綺麗な服を着てお上品に演奏する人たちにしか見えませんが、あそこに辿り着くまでには幾多の困難を乗り越えているのですよ。これも、どこの世界でも共通のことですね。