白河三兎、祥伝社
☆☆☆
思春期の若者を主人公にした小説はたくさんありますが、この本の主人公たちは普通の青春小説では脇役としても登場しない人ばかりです。扱っている会社が少ない商売を【すき間産業】なんて言いますが、この本はまさに【すき間青春小説】と言っていいのではないでしょうか。
クラスで先生が、
「5~6人で適当に班を作れ」
と命令すると仲の良い者同士で班を作ると思うのですが、そんなときにどこの班からも声がかからず、ボッチになってしまう人が必ずいますよね?そんな人たちがこの小説の主人公です。
とある高校の修学旅行であぶれてしまった人たち6人で班が作られます。この6人が一人ずつ一章の主人公になって、6つの章で一冊の本になっています。
6人のボッチの目線で学園生活の一大イベントである修学旅行を描いた小説なんて聞いたことないでしょ?
これは私の考えなんですけど、学園生活が楽しくてしかたがないような人は本なんて読まないと思うのです。そんな暇があったら、リアルな世界で忙しく何かしているはずです。本を読むような人は実生活に不満があって、つらい現実を一時でも忘れるために本を読んで空想の世界で翼を広げているのだと思うのです。だから、この本はそんな人たちにとって、希少で、貴重な本だと思います。
最後の第六章で、映像がない小説だからこそできるトリックを作者が読者に仕掛けています。私は混乱して、前を読み返してやっと腑に落ちました。そんな遊び心もある、とても面白い本です。