赤澤竜也、飛鳥新社
☆☆☆
絵のない少女漫画だと思ってもらえれば間違いありません。
東京の八王子にある高校の吹奏楽部を舞台にした爽やかな青春小説です。と言っても吹奏楽の強豪校ではなく、物語の始まりでは廃部の可能性もある情けない感じの吹奏楽部です。
そこへエネルギーの塊みたいな先生がやってきて、やる気のない生徒たちをドンドン巻き込んで、最後は地区予選突破まで導いてしまいます。
そのため、物語の基本は【先生ＶＳ生徒】の対立構図で描かれています。先生が設定したハードルを越えるために四苦八苦する生徒たちと学園生活を共にして下さい。
実際の吹奏楽でも、強豪校には個性豊かで優秀な指導者がいることが多いですよね。マラソンの名指導者である小出義雄さんが、
『１０代の選手の個性なんて尊重する必要はない。それよりも、コーチが練習方法を押し付ける方が成績が伸びる。』
というようなことをテレビの対談番組でしゃべっているのを聞いたことがあります。自分が高校生のときにこんなこと言われたら反発したと思うのですが、４８歳の今になってみると納得してしまいます。
知識や技術を吸収しやすい青春時代は有限です。そんな貴重な時間を試行錯誤で無駄に費やすよりは、優秀な指導者に引っ張ってもらった方が絶対に効率的だからです。
そういう意味で、この物語は優秀な指導者に巡り合うことの幸運を扱った物語でもあるような気がします。
