滝本竜彦、角川文庫
☆☆☆
たくさんの小説を読みましたが、【ひきこもり】を主人公にした作品は初めてです。
本の中で、日本にはひきこもりが2百万人いると書いてあったので、私が思っているより、この小説のマーケットは大きいかもしれません。
主人公は、大学を中退した佐藤達広、22歳。六畳一間のアパートでひきこもりを始めてから4年が過ぎ、
①社会からの強い疎外感がある。
②広い所へ行くと落ち着かない。
③他人とコミュニケーションが取れない。
などの症状に悩まされています。そんな達広に実家から、
「リストラされたので仕送りは出来ない」
と通達がなされ、タイムリミットが設定されます。
「なんとかしなくちゃ」
のたうち回って考えるのですが、どれだけ考えても自分の居場所が世間にあるようには思えません。そうこうするうちに日が暮れて、貴重な一日が終わっていくのです。
刻々と近づく破滅の日に怯えながら生活する達広が、このまま破滅するのかと思ったまさにそのとき、見ず知らずの17~18歳に見える美少女から、
「私が、ひきこもりからの脱出方法を教えてあげるよ」
と笑顔で言われます。達広はひきこもりから脱出できるのか?、美少女の正体はいったい何?、と言ったお話です。
私もうつ病、無職で、何か月も他人と会話しない生活をしているので、ひきこもり同然です。そのため、達広が世間に対してもっているイメージに共感しながら、笑って読んでしまいました。
リア充には勧めませんが、ひきこもりの人にとっては共感できる箇所がたくさんあると思います。文章はコメディ調なので、同じダメ人間でも太宰治みたいに暗い雰囲気はまったくありません。安心して手に取り、大いに笑ってください。
全国2百万人のひきこもりが一斉に本屋へ注文を出せば、本屋大賞も夢じゃないかもしれません。(笑)