あさのあつこ、朝日新聞出版
☆☆☆
題名の《アレグロ》はイタリア語で「陽気な、快活な」で、《ラガッツァ》はイタリア語で「女の子、少女、娘」だそうです。
本の表紙に女の子が二人描かれているので、このうちの一人が「陽気な女の子」なのかと思って読み始めたのですが、読み終わってもそんな女の子は一人も出てきませんでした。
だからと言って、「騙された!」なんて感想は持ってなくて、私は終始、面白く読ませていただきました。
表紙の真ん中の女の子が主人公の相野美由(高1)で、平凡で目立たない女の子です。中学のときに吹奏楽部だったのですが、仲間から「熱意が足りない」と言われてから関係がギクシャクして、中二の秋に吹奏楽部を辞めた過去があります。
そんな美由が高校に入学して、表紙でユーフォニアムを持っている男の子から誘われて再び吹奏楽部に入り、夏休みにある地方予選大会に臨む直前までが描かれています。
当然、美由は過去の失敗を思い出し、吹奏楽部に入部するまでが一苦労だし、入部してからもビクビクしながら活動するのですが、仲間に助けられながらというか、私の印象では助けられっぱなしで高校一年生の春から夏までを過ごします。
でも、私は【運は人が運んでくる】と思っているので、この辺りまったく違和感なく読めました。あと少しで私は50歳ですが、
「あの頃は楽しかったなぁ」
と懐かしく思い出せる時代には、必ず素晴らしい仲間や先輩がいたからです。
ちょっと物足りなかったのは、美由たちとたった五か月しか過ごせなかったことです。ぜひ、あさのあつこサンには続編を書いていただいて、後輩を指導する美由の姿なんかも見せていただきたいところです。