中島京子、中央公論新社
☆☆☆
主人公は花村茜、43歳、独身、結婚経験なし、です。
茜の父が急逝してしまいました。母親もすでに亡くなっていた茜は遺産相続で東京の郊外にある古いアパートを手に入れます。ちょうどその頃、会社でリストラ候補になっていたので、これを機に会社を辞めてアパートに移り住み、管理人をしながら生きていくことにします。しかし、そこは個性的な住人だけが暮らすアパートだったのです。
どんなメンツかといいますと、亡くなった父の愛人、自称ウクレレ奏者、探偵、他にも短いフレーズで伝えにくい変人が住んでいます。
家賃を滞納するとかのトラブルはないのですが、茜と極めて特殊な人生観をもった住人との交流がとてもおかしなお話です。
茜を含めて、登場人物の全員が社会の片隅でひっそりと生きている人ばかりなので、人生訓とか役に立つ情報はないのですが、読んでいると他人から称賛されるような立派な生き方をしなくとも人間なんとかやっていけるもんだ、と楽天的な気持ちになれます。
なんだか私の人生って、子供の頃に思い描いてたのと随分違うな、と思っているあなたにお勧めの本です。