堂場瞬一、中公文庫
☆☆☆
領土を持たない民族であるラガーン人の中から、イラク国内に領土を獲得して独立国家を作りたいと強く望む者たちが現れます。この人たちの一部が過激化し、暴力的な活動を始めます。
ラガーン人が建国の根拠とするのが【バビロン文書】です。【バビロン文書】にはラガーン人が今から四千五百年前に古代都市バビロンを作った民族であることが書かれているはずなのですが、楔形文字の専門家でも解読不能で、問題を複雑にしています。
ただ、メソポタミアという地域は古代から様々な民族が興亡を繰り返している場所なので、
「四千五百年前に、私たちがこの一帯を実効支配していた」
とラガーン人が主張しても
「はい、そうですか。では、あなたたちに土地を譲ります」
とはなりません。そのことを心配する穏健派ラガーン人は、過激派ラガーン人を妨害します。
過激派、穏健派に分かれたラガーン人とイラク一帯への影響力を強めようとするロシアやアメリカの思惑が交錯します。
主人公である日本人の戦場カメラマン鷹見正輝(38)は、恋人が楔形文字の専門家であったことからこの騒動に巻き込まれます。恋人を安全な場所へ連れ戻すために鷹見は過激派、穏健派、CIAを相手に孤独な戦いを始めます。
【バビロン文書】の原本の奪い合い、【バビロン文書】の解読、物語の終盤には米軍まで介入してきて話がエスカレートするのですが、鷹見は恋人を救い出すことができるのでしょうか。
ここからは私の感想です。【バビロン文書】を奪うために過激派がヨーロッパの大都市で対戦車ヘリコプターを使用するのですが、ちょっとやりすぎかな、と思いました。ハイテク兵器は常時メンテナンスが必要なので、テロリストが使用できる武器ではありません。しかも、そのヘリコプターが少しも活躍せずに墜落しちゃうし。最後まで読みましたが、話が大きくなりすぎて荒唐無稽になり、正直、私はシラケました。