安壇美緒、集英社
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北海道の田舎に中高一貫の進学校が新設されることになります。そこは女子高で、自宅から通うこともできますが、まかない付の学生寮も併設されていて、そちらにもたくさんの生徒が住んでいます。物語の登場人物からみる割合でいうと、学生寮から通っている生徒が7割かと思います。
主人公は二人いて、宮田佳乃と奥沢叶です。この本の中では、二人が中一から高二になるまでを描いています。
佳乃は教育ママだった母親が小学生高学年だったときに急逝し、仕事人間で子育てにまったく関与してこなかった弁護士の父親が佳乃を持て余し、佳乃をなかば強制的に全寮制の学校に入れてしまったといういきさつがあります。このことを佳乃は親に捨てられたと思っています。
叶はシングルマザーの家で暮らしています。母親は水商売で生計を立てており、妻子ある男性の愛人です。叶はこのことにコンプレックスを持っていて、母親のようにはなるまいと、努めて優等生を演じています。
育った環境がまったく違う佳乃と叶が奇跡的確率で同じ教室で勉強することになり、この学校で常に成績上位を争うライバルとなります。
性格もまったく異なる二人ですが、共通する目標があります。それは、早く自立して親から独立したいということ。二人が必死に勉強して有名大学を目指すのはそのためです。
こんな問題を抱えた二人が主人公ですが、わき役たちは普通の青春を謳歌する女子中高生なので暗いばかりの話ではありません。青春小説として高い完成度を持つ小説であり、佳乃や叶に興味を持ってくれた方には自信をもって読むことを推薦できます。
私にとって10代なんて何十年も前の過去ですが、読んでいるときには私も10代にもどって読んでいました。