うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

手のひらの楽園

宮木あや子新潮文庫

☆☆☆

園部友麻が高校二年生になってから二年生の終わりとなる3月までを描いた青春小説です。

 

物心ついたころから父親はおらず、死んでしまったとだけ教えられています。長崎県の離島で母子家庭に育ち、家が貧乏だったので手に職をつけられる学校、奨学金で通える学校、という2つを条件に選んだ私立夕陽ノ丘高校エステ科に進学します。

 

高校は地元の長崎県ですが本土にあって自宅からは通学できないため、友麻は学校の敷地の中にある寮で生活をしています。

 

こんな背景をもった女子高生が主人公なので、読者はドップリと高校生活を疑似体験できます。なにしろ友麻は一日中学校にいますからね。

 

母親が失踪してしまったり、自身の出生の秘密を知ることになったり、男子に告白されたり、寮で相部屋になった子と仲良しになったり、とイベントが次々に発生するので読んでいて退屈しません。

 

友麻の性格ですが、生まれてから中学三年生まで離島で育ち、高校も本土とはいえども長崎県にあるので純朴そのものです。クラスの中心にいるヒロインという感じではなく、明るくなく、暗くなく、ニュートラルな性格です。空気が読めるので人との距離感が上手なので友だちに偏りがなく、いろいろな子と関係を結べています。

 

学校を卒業したら奨学金の返済が始まるため、常に経済的自立を考えている友麻ですが、そのことで悲観的にはならず、若者らしい明るい展望を持って将来を見据えているのが友麻の好感度を上げています。

 

現在高校生をされている方から私のように50代まで、幅広い読者に共感を与える本なのでお勧めです。