うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

あと少し、もう少し

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瀬尾まいこ、新潮社
☆☆☆
地方の中学校で、男子中学生たちが学校対抗の駅伝に取り組むお話です。

 

駅伝には6人が出場するのですが、小さな中学校のさらに人気のない陸上部から最初に集まったのは3人でした。そこから、部長の桝井クンが学校で足の速そうな子、ムードメーカーになってくれそうな子に出場してくれるように頼んで回ります。

 

本当はみんなと走りたいのに素直になれない不良の大田クン、複雑な家庭環境を周りに知られたくないために何事にも斜に構えて、同級生と距離を取っている渡部クン、頼まれたら嫌とは言えないジローくん。紆余曲折を経て、駅伝チームが結成されます。ここから順調に駅伝へ向けて動き出すのかと言えば、ノーです。春に教員の人事異動が行われて、新たに赴任した陸上部顧問は陸上の知識が全くない美術教師の上原先生になってしまい、桝井クンはチーム作りに気を配りながら、練習メニューまで考えなければならない大変さです。

 

このお話が変わっているなと思ったのは、駅伝チームが結成される夏から、駅伝が行われる秋までを6人を主人公にした章節で、何度も何度も繰り返すことです。なので、1章節読み終わるたびに季節が秋から夏へ逆戻りして、違う男の子の目線で再び同じ事件を追体験するのです。桝井クンにはこんな風に見えていたことが、大田クンにはこんな風に見えていたんだと思える仕掛けになっていて、面白い読ませ方だなと感心しました。

 

地域に住んでいる誰もが通う公立の中学校を舞台にしているので、色んな男の子たちが登場して楽しい読み物です。一緒に体験したことも受け止め方は人によって異なることを気づかせてもらえる本です。