塩野七生、新潮文庫
☆☆☆
私は塩野さんの本が好きで、ほとんど読んでいると思います。そんな、たくさん出版されている塩野さんの本の中から、
「塩野さんの本は読んだことがないんだけど、どの本から読んだらイイ?」
と訊かれたら、とても悩みますが、私ならこの本をおススメします。
ざっくり言うと、ヴェネツィア共和国の誕生のきっかけとなったゲルマン民族の大移動から、ナポレンによって自治が奪い取られるまでをわかり易く書いた本です。
とかく、大学教授のような人が書いた歴史書は難解で、読んでいて眠たくなる本ばかりですが、《海の都の物語》はヴェネツィア共和国の指導者たちに、次々と難題が襲いかかるので、読者は退屈するヒマがありません。
理由はわからないのですが、中世の西ヨーロッパというのはなぜかイタリア半島を中心に政治が動いているため、この本を読むと西ヨーロッパの歴史を通して勉強した気になれるのもおススメのポイントです。
作中ではその時どきの強国がヴェネツィア共和国にちょっかいを出します。広い領土があれば自給自足をして、孤立主義を通すこともできますが、都市国家のヴェネツィア共和国は貿易を続けなければ生きていけません。
軍事的な勝利が望めない国を相手に、負けない方法を一千年も模索し続けたヴェネツィア共和国の歴史に興味が湧いた方は、ぜひ読んでみて下さい。