原田マハ、祥伝社
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佐々岡鮎子(43)のもとに、かつて在籍していた女子高の創立120周年を祝う記念事業で講演をしてほしいと依頼状が届きます。
鮎子は20歳で商業誌にデビューしてから、43歳の現在まで第一線で活躍を続けてきた人気漫画家です。その作品のいくつかは映画化もされ、知名度が高いことから、白羽の矢が鮎子にたったのです。
日々の執筆に忙殺され、高校生の3年間だけを暮らした岡山でのことはすっかり忘れていた鮎子には突然の依頼に思えましたが、同時に催される同窓会に当時の親友、武美も出席することを知り、岡山であった様々なことが懐かしくなって、講演の依頼を受けることとします。
講演の前に開かれた同窓会で27年ぶりに会う同窓生たちは一目では誰が誰だか分からなくて、歳月の流れを感じずにはいられないのですが、落ち着いてよく見れば、皆どこかに当時の面影があり、鮎子を27年前の世界へと連れ戻すのです。
この物語では1980年代の鮎子と、27年後の鮎子が交互に登場し、お話が進んでいきます。私のように40代の人間からするとどちらの鮎子にも共感しまくりで、途中で読むことをやめられず、一気に最後まで読み通してしまいました。
『今の高校生が読んだら、どんな風に思うのかなぁ。』
なんて思ったりもしました。自分たちの両親にもこんな青春があったんだと不思議な気持ちになるのでしょうか?
ある時期、学校という空間で一緒に過ごした仲間たちも、27年も経つと、どこで何をしているのか分からなくなってしまうのが普通だと思います。私はこの本を読んで、
『みんな、何をしているんだろうなぁ。』
と思いました。
この物語には衝撃のラストが用意されていて、
『原田先生、そんなぁー!!!』
と心の中で叫んで、ウルウルしちゃいました。1980年代に高校生だった皆さんにぜひ読んで欲しい一冊です。