香坂直、角川書店
☆☆☆
物語の舞台は、山が海のすぐそばまでせまってきている地方の町です。そんな町の中学で同じクラスになった5人の中学生たちの不器用な恋のお話です。
5つの章からなっていて、章ごとに主人公が変わります。
中学生って、第二次性徴が始まるせいで、気持ちが不安定になって、はたから見ると不合理な行動を取ってしまいがちだと思うのだけれど、そんな姿をとても上手に描いた物語だと思いました。
小学生のころには感じなかった異性への関心をどう扱ったらよいのか悩む5人ですが、一人ひとり悩み方も、出す答えも違います。でも、どの子の出す答えにも、私が反発を感じるようなものはありませんでした。
現在、中学生の方が読めば、5人も主人公がいるので一人くらい共感できる主人公を見つけることが出来るのではないでしょうか。
歓喜につつまれるラストというのは一つもありませんが、5つのお話全てに心がじんわりと温かくなるラストが用意されているので、安心して読むことが出来る本です。