大崎梢、光文社
☆☆☆
1時間くらいで読むことが出来る短編が5つ納められています。
表紙の絵がメルヘンチックなものだったので、童話かファンタジーだと思って読み始めたのですが違いました。
5つのお話に共通するのは、数年前から何十年も前に起こった事件の真相が明らかになって、ラストで気持ちが温かくなったり、スッキリするということです。
人は一人ぼっちでは生きていけないので、好き嫌いに関わらず世間と言うものと付き合っていかなければなりません。その中で、生まれる縁は良縁ばかりではありません。悪意を持った人と縁が生まれてしまうこともあるのです。
この本では悪意を持った人との関係を清算したり、縁を切るために遠くへ避難した過去を持つ人が登場します。
主人公になる人物は当時、事件現場の周囲にいて結果について知っているが、真相は知らない人たちです。事件について腑に落ちないままで時が過ぎ、真相の解明を先送りして暮らしているところに、きっかけが訪れて事件の真相が明らかになります。
【真相が明かされる】なんて書くとミステリー小説なのかと思う方もいるかもしれませんが違います。作中にヒントが隠されていて、最後にそれらが繋がって事件解決という構成にはなっていないからです。
この本から、私が感じたことは、
「善良なだけでは世間を渡っていくことは難しい。悪意を持った人から身を守る知恵が必要だ。」
ということです。
もし、この本を手にする機会があるなら、《野バラの庭へ》が秀作なので読んでください。先が気になって途中で読むのを止めることができなくなります。