谷川史子、少年画報社
☆☆☆
私も、もうすぐ50歳なので、こんなに美しい世界は現実には存在しないと分かっているのですが、それでも、
『こんな学校があったらイイなぁ』
と思いながら読みました。
主人公の田中清(さや)が第一希望だった名門女子高校、鈴蘭女学院に入学してから卒業するまでを描いた学園マンガです。
清は、素直で、優しくて、努力家で、少し鈍感なところがある女子高生です。そんな清が友だちとの関係や憧れの異性のことで、喜んだり、悩んだりする姿が描かれています。
この鈴蘭女学院ですが、正真正銘のお嬢様学校で、女学生たちの話し言葉がとにかくお淑やかです。これだけテレビやインターネットで粗野な言葉が飛び交い、そこから影響を受けずにはいられない今どきの女学生が、こんな話し言葉で会話するなんて、現実にはありえません。
また、清の周辺で物語を盛り上げるキャラが何人も登場するのですが、悪意を持ったキャラは一人も登場しません。もちろん、キャラが違うので色々な性格の人たちが登場するのですが、すべて善意の塊みたいな人ばかりです。
清はというと、その言動は純真そのもので、雑菌だらけのこの浮世で、こんな女学生を探すのは、本物の宇宙人と出逢うくらい難しいと思います。
しかし!、日々の生活のなかで、私たちは嫌でも現実と向き合わなければならないわけで、
『あぁ、もぅ、現実なんてたくさんだ!』
と思われている方が沢山いるのではないでしょうか?そんなとき、汚いものがまったくない、まるで無菌室のような世界で、青春を過ごす乙女たちの物語にドップリつかって、逃避するのもよいと思うのです。
最後に、私はこのマンガを少女マンガと思って読んでいたのですが、作者のあとがきで、男性読者のアンケートをもとに企画され、始まったマンガと知って驚きました。清が黒髪ロングなのはそのためだそうです。鈴蘭女学院は男性諸氏の憧れが産み出した空想上の女子校みたいです。