督促OL修行日記

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 榎本まみ、文春文庫

☆☆☆

すごく面白かった!

 

大学を卒業し、社会人になってはじめて配属された職場がクレジット会社のコールセンターで、借金を返さない人に督促の電話をかける仕事についた女性の体験記です。それも、チョットだけ取材して書かれた軽薄な記事ではなく、数年にわたって戦場の最前線に踏み止まり、次々に精神を病んで倒れていく戦友を見送ってきたベテラン兵が戦場で見てきたことを語ってくれるのですから、面白くないはずがありません。

 

クレジットカードを利用した人の大半は、

 

【借金は返さなければならない】

 

と承知されているはずですが、世の中にはこの常識が通じない人も多数存在します。作者が相手にするお客様は借金を踏み倒すことに罪悪感を感じない人々です。こういった、常識のない人たちがお上品なわけがなく、督促の電話をかければ機関銃から放たれる弾丸のように次々と放送禁止用語がぶつけられ、苦情、脅迫、説教、呪われる、などなどの被害にあうわけです。

 

「金ならねぇんだよ!、ツーツー・・・」


「そのうち払うっていってんだろ!、ツーツー・・・」


「今からお前を殺しに行く、ツーツー・・・」

 

なんて芸のないものから、

 

「こんな人を不愉快にするような仕事、しない方がいいと思いますよ!!まじめに働きなさい、まじめに働くことだけを考えなさい!」

 

なんて上から目線で説教してくるお客様もいて、まさに作者の職場は混沌とした戦場です。こんな戦場で作者は一念発起し、独自に編み出したノウハウで、年間2千億円の債権を回収するまでになるのですが、詳細はご自分でお読みください。

 

巻末に佐藤優さんが解説という名の推薦文を寄稿されていて、このようなブラック企業で生き残る二つのタイプを書いています。それが私が20年過ごした役所でも当てはまり、とても共感したのでここに転載しておきます。

 

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一つ目は、本人自身が歩くブラック企業のようになり、「義理をかき」、「人情をかき」、「平気で恥をかく」という「サンカク」精神を体得してしまう場合だ。周囲からも取引先からも鼻つまみになるが、とにかく数字を出すので生き残ることができる。
第二は、ブラックな仕事は、糊口をしのぐためと割り切って、仕事以外での直接的人間関係をたいせつにする人だ。こういう人は、やりすぎて事故を起こすことがなく、仕事を離れれば普通の人なので、人望が集まる。こういう人間力は、優れた人に伝播する。
佐藤優
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借金を督促する人たちの過酷な現場を覗くことが出来たのはたいへん興味深いことでした。また、日本には借金で首が回らなくなっている人がこんなにもたくさんいて、その人たちの生き方や思考は摩訶不思議で、読んでいるとお金がないことでクヨクヨするのが馬鹿馬鹿しくなります。多重債務者になるのはゴメンですが、彼らのタフな精神には学ぶべきものがあります。