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つまらない本ではありません。しかし、不思議な本です。起承転結がないのです。
【間宮兄弟】という題名ですから、間宮兄弟が主人公なのですが、本のはじめと終わりで兄弟の生活、思想、経済状態などになんの変化もありません。つまり、最初から最後まで兄弟の日常をたんたんとつづった本なのです。
間宮兄弟は30代の独身男性です。女性にもてる要素が一つもなく、年齢と彼女いない歴がイコールです。
兄は父親が弁護士だったため、なんとなく法学部へ進みましたが、司法試験に不合格となったことから法律の道をサッサと諦め、飲料メーカーで働いています。
弟は人付き合いが嫌いなので一人で定型業務を黙々とこなしていれば怒られずにお給料がもらえる仕事を探し、小学校の用務員になりました。
兄弟は人と比べて秀でていることが何一つなく、平凡を絵に描いたような人間です。こんな二人が同居して楽しく暮らしています。
でも、30年以上、女性と付き合ったことがない兄弟です。女性に対して大きな夢というか、憧れというか、幻想というかを持っていて、物語の中で兄弟はそれぞれ別の女性に告白して振られます。女性にもてる要素が一つもない兄弟ですから、振られることは初めてではないのですが、告白するまで勘違いで盛り上がっているので落ち込みます。そして、いつもの生活へ戻って行きます。
誰からも賞賛されない兄弟ですが、プライベートは充実しています。個々に趣味がありますし、同居しているので二人でやる遊びもいくつかあって、他人がどうこう言おうが、二人は楽しくやっているからです。
才能や特技がない人は、間宮兄弟のようになるべく早く他人の目を気にすることを止めて、自分が楽しいと思うことだけにお金と時間を使うべきだとこの本は教えてくれています。