南綾子、双葉社
☆☆☆
36歳の誕生日を迎えた日に一子は今年一年の目標を立てました。それは、
《処女喪失》
そうです、一子は36年間一度も彼氏がいたことがないデブでブスな処女なのです。
かと言って、一子が処女を喪失するために具体的な行動をすることはありません。ダイエットはしませんし、自己啓発のようなこともしません。一切しません。
頭の中はエロと食欲で一杯で、自堕落を絵に描いたような生活を送るだけです。
「くそっ。今日も処女を捨てられなかった。豚の背脂たっぷりの大盛りラーメンを食べて、AV見ながらオナニーして寝るか!」
なんてことをつぶやいて一日を終えることの繰り返しです。
この本は、主人公である一子が本の始まりで《処女喪失》を目標とすることを明確に宣言しているので、一子が《処女喪失》したらそこで終わりというわかり易い物語ですが、はたして、こんな女子力がマイナスな女でもできるのでしょうか?文章は明るく、軽薄で、深刻な要素はまったくないので、暇つぶしに読むのに最適です。
読み終わって、30年くらい前に少数民族《オタク》から《ヤオイ》という言葉を教えらたことを思い出しました。主に女性漫画家が描くエロ本を《ヤオイ本》というのですが、
「山がない。オチがない。意味がない。」
の略語だそうです。この本はエロ本ではありませんが、《ヤオイ》だと思います。
まぁ、でも、こんなダメ人間でも生きていてイイんだということで、一部の人たちには生きる勇気を与える本になるかもしれません。