私は、うつ病で無職なので電車に乗るのは8週間に一度、うつ病の薬をもらいに病院へ行くときだけです。
毎日、通勤で電車に乗っている方は違和感を感じないと思うのですが、その日、電車の車内の光景を私は異様なものに感じました。車内にいる人のほとんどがスマホを見ていたのです。
「スティーブ・ジョブズは世界を変えたな。スマホが日本から生まれなかったのが残念。」
と思ったのですが、こうなったのは必然とも思います。
私は、1991年に社会人になって、もろにIT革命の影響を受けました。私は、コンピューターに適性がなく、周りの人に教えてもらいながらなんとか使っているというレベルで、使いこなすなんてレベルではありませんでした。
教えてもらうとき、親切に教えてくれる同僚は少数で、たいていの場合は、
「なんだよ、こんな簡単なこともできねぇのかよ」
という気持ちが伝わってきました。
IT革命の初期、日本のコンピューターに詳しい人たちの意識と言うのは、
【馬鹿はコンピューターが使えない】
という意識で止まっていたのです。しかし、アメリカでは、これまでコンピューターを使ってこなかった人にどうやってコンピューターを使ってもらうかを考えている人がいました。そういう人が、GUIやスマートフォンを作ったんです。
日本の総合家電メーカーの取締役会で、技術部門の責任者が取締役から、
「どうしてスマートフォンを我社から発明できなかったんだ。スマートフォンに使われている技術なら我社にあったじゃないか!」
と叱責されたさいに、技術部門の責任者は次のように答えたそうです。
「我社には高性能なコンピューターを開発する人はいますが、使いやすいコンピューターを開発する人はいません」
IT革命の黎明期、日本では、コンピューターを使いたかったら勉強して使えるようになれ、というのが常識で、コンピューターの方から人にやさしくなるという発想はなかったのです。
日本政府はIT教育を行うことで巻き返しを図ろうとしてますが、この部門はデファクトスタンダード(事実上の標準)が確立してしまうと挽回することが不可能なので私が生きてる間は、日本人はアメリカ製のプラットフォームを利用して使用料を払い続けるということになると思います。