元沢賀南子、中央公論新社
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著者の元沢さんが、終の棲家を探して不動産巡りをした経験を書き留めた本です。
不動産は価格変動がある金融商品です。だから、あまり古いデータでは役に立ちませんが、2023年のデータが載っているので今買って読めば問題ありません。
元沢さんの趣味は不動産です。ヒマさえあればネットで不動産情報を検索し、休日は現地に赴いて内見しています。就職してから現在(57)までに10回以上引っ越しをし、不動産のことなら業界関係者に負けない知識があります。
分からないことは詳しい人に聞くのが一番手っ取り早いのですが、不動産のことなら元沢さんに任せておけば問題なさそうです。
しかしながら、元沢さんが自分自身のために不動産を探しているので、元沢さんと同じくらいの懐事情の人が読んだ場合、この本は一番有用に感じられるはずです。そこで、元沢さんのスペックを紹介します。
①早稲田大学を卒業後、新聞社に記者として就職。
②50歳で早期退職し、現在はフリーライター。
③投資用不動産を所有。つまり、大家さん。
新聞記者は30代で年収が1千万円を超えます。また、本の帯に《低収入女子》とありますが、たぶん嘘です。元沢さんのもう一つの趣味は骨董品と美術品の収集で、引っ越し先を選ぶ条件にこれらの貴重品を収納&展示できるスペースの確保もあるからです。相当に貯め込んでいるとお見受けしました。そして、フリーライターとはいえ、新聞記者時代のコネを使って順調に執筆活動しています。大家さんとしての収入と合わせて年収5百万円以上あるように推察されます。
この本で一番ページを割いているのは、都内にある3~4千万円の分譲マンションです。この価格帯の不動産に手が出せる独身者が読むと一番ためになります。本の副題として《シングル女子は定年後どこに住む?》とありますが、この本は男性にも有益です。不動産を購入するのに男も女も関係ないからです。
ただ、不動産を見る目が女性特有だな、と思ったところもあります。元沢さんは友だちを自宅に招待したときに恥ずかしくない、できたら羨ましがられる家に住みたいと思っているフシがあります。家なんて実用的であれば良い、と思ってしまう男性にはこういった感覚は理解できないかもしれません。だって、見栄を張ろうとするとその分、価格に転嫁されますから。
貧乏な人のために、地方移住、シェアハウス、公営団地も取材してますが、載っているのは最低限の情報です。
ここからは私の感想を書きます。集合住宅に住む場合、予算を低く抑えると住人の民度が落ちます。真夜中に大きな音を出して騒いだり、共有スペースを汚したり、このことは元沢さんも本の中で触れています。安い不動産には、精神障害、発達障害、知的障害の人が住んでいます。余計なトラブルを避けるためにも不動産にはある程度のお金を使った方が良いことは確実です。そして、不動産の世界は【お金】の話しにつきる、ということです。繰り返しますが、不動産は金融商品なのです。