山本幸久、徳間書店
☆☆☆
題名の通り、主人公は超能力者です。しかし、ライトノベルに多い、主人公が圧倒的な能力で障害や問題を解決していく話ではありません。
物語を読み始めてスグに主人公の能力が明かされますから、ネタバレしても問題ないと思うので書いてしまいますが、主人公の能力は瞬間移動です。しかし、気持ちが極めて高ぶったときにしか発動しないし、行き先も選べません。まったく便利ではありません。
また、主人公が憧れるヒロインも超能力者なのですが、こちらも気持ちが高ぶったときにフワフワと空中浮遊できるというものです。自由自在にビューンと飛ぶのではなく、あくまでフワフワです。
本の中身は、第一部と第二部で構成されています。第一部は東京から3百キロはなれた日本のどこかで、主人公の誠とヒロインの花奈の小学生から高校生までを描いています。第二部では、大学に進学するために上京した二人を描いています。
ざっくり説明すると、二人は子供の頃、その年齢にふさわしい恋をして、高校時代に疎遠になり、東京で再会してよりを戻すお話です。しかし、これだけじゃお話がつまらないので、二人の間には誤解や障害が立ちふさがります。恋愛小説に欠かせない、
『あーっ、じれったい!』
という気持ちになれます。また、瞬間移動や空中浮遊という能力が恋愛に役に立たないことがよく分かります。
ライトノベルほどくだけた文章ではありませんが、肩がこらない娯楽小説で、最後はハッピーエンドですから、気軽に読める本を探している人にお勧めです。