中田永一、小学館
☆☆☆
アンジェラ・アキの《手紙~拝啓 十五の君へ~》を基にした小説。五島列島の中学校にある合唱部を舞台に中学生たちの成長を描きます。
妊娠した音楽の松山ハルコ先生が産休をとることになり、代替え教員として松山先生の中学時代の友達、柏木ユリ先生がやって来ます。そして、松山先生が担当していた合唱部も柏木先生が担当することになり、合唱部の生徒たちと1年間、部活動を通じて心を通わせることになります。
初めは女子しかいない合唱部でしたが、美人の柏木先生を目当てに男子も入部してきて、賑やかな部になります。当然、女子しかいないときには起こらないようなトラブルが発生し、部内の人間関係がギクシャクするのですが、そんな箇所を読みながら私は
『こういう子いるよねー』
と思いながら懐かしく読みました。様々な事情を抱えた生徒たちが紆余曲折を経験しながら、夏に行われるNHK主催の合唱コンクールに向けて練習に励みます。生徒ばかりか、柏木先生も葛藤を抱えながらの部活動ですが、互いにぶつかりながら心と歌声を一つにしていきます。
未来を見つめる生徒たちと、そんな生徒たちに中学生だったころの自分を重ねて見ている柏木先生が印象に残る小説です。
余談)
9月10日(水)読売新聞夕刊に《くちびるに歌を》が新垣結衣さん主演で実写映画化されるとありました。記事を読んでいたら、合唱部の部長が仲村ナズナとなっていたので、「あれ?」っと思いました。原作の部長は辻エリなので、原作とは話しが少し違うのかもしれません。