荒木源、角川文庫
☆☆☆
私は42歳のときに仕事上のストレスからうつ病になり、組織に追い込まれて退職しました。ですから、自ら希望して退職した人たちとは違うわけですが、早期退職を選んだ人たちに興味があり、どんな気持ちで退職し、その後どうしているのか知りたくてこの本を読み始めました。
しかし、まったく違うお話でした。一言でいうならば、【半沢直樹】です。
中堅のお菓子メーカーが舞台で、主人公は50代前半の男性課長です。その会社で早期退職の募集が始まります。
経営に問題があると思っていた社員がいなかったため社内に動揺が走り、主人公も応募するかどうかで悩むのですが、そんな最中に会社の不祥事がネットに流出してしまい、売り上げが急減。割増退職金が払えなくなって、早期退職の募集は打ち切られます。
ここからがこのお話の本筋です。
みるみる傾いていく会社を目の当たりにして、主人公は会社を愛していることに気づき、会社を立て直すために奮い立つのです。ここからのストーリーは半沢直樹と一緒です。巨悪をあぶり出し、
「やられたらやり返す、倍返しだ!」
とばかりに幹部職員に証拠を突きつけ、辞職に追い込みます。ついでに、主人公が昇進するオマケつきです。
現在、日本では経営に問題のない企業でも45歳以上を対象にした早期退職の募集が頻繁に行われています。つい最近でもパナソニック、ホンダで募集を行い、「あっ」、と言う間に枠が埋まったとニュースで知って驚きました。すくなくとも、この本はそんな人たちの参考になるお話でないことは確かです。
無能な幹部社員をやっつけて、スカッとしたい人たちにお勧めの本です。