うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

虹色天気雨

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大島真寿美小学館
☆☆☆
主人公は30代後半と思われる市子です。物語は市子を取り巻く人々の交流を描いています。

 

お話は市子の親友である奈津の夫が失踪して始まり、それに対してどのように対応するかのドタバタ、そして、それに巻き込まれた登場人物たちが新たな生活へ向けて第一歩を踏み出すという具合に進んで行きます。

 

登場する人たちのほとんどが組織に属さず生計を立てているフリーランスの人たちだからでしょうか、事件に対しての考え方や行動がどこか楽天的なように感じられ、悲壮感みたいなものがあまりないことに私は好感を持ちました。

 

市子を通して、人の【縁】とは不思議なものだと考えさせられます。この人とはずっと並んで歩いて行くものだと思っていた人とは案外続かなかったり、奈津のように中学生の時に偶然出会った友達と現在まで続いていたり、人生とは予想外な出来ことの連続だと考えさせられます。

 

奈津の夫が失踪することをのぞけば、普通に暮らす人たちに起こりうる平凡な日常を市子が送っているのも一般的な読者の共感をよぶのに役立っていると思います。私は、独身の市子が奈津の子供の成長を見て、時の流れを感じるくだりなどは、多くの人が共感できるものだと思いました。

 

市子の周辺にいる登場人物たちに悪人が登場しないのもよかったと思いました。自己犠牲を払ってまで、市子や奈津を助ける登場人物は出てきませんが、不運に見舞われた奈津が孤独にならないように気にかけて、何かしら理由をつけて奈津を訪ねて行く姿に心が温まりました。

 

暑苦しくもなく、かと言って冷たくもない、適度な距離を保って交流を続ける人たちに、私もこんな人間関係が持てたらイイなぁ、と憧れました。