川村元気、小学館文庫
☆☆☆
30歳の主人公が、物語の冒頭でいきなり余命宣告されてしまいます。
「猫が消えた世界を扱ったお話じゃないの?!」
と、私は少し混乱しましたが、すぐに納得しました。こんな状況に置かれた主人公の前に悪魔が現れて取引を持ち掛けるのです。
『何かを世界から消すことで、あなたの命を1日だけ長くできます』
悪魔から、こんな提案をされたら、みなさんならどうしますか?主人公は悪魔の提案にのって、悪魔が決めた物を世界から消すことに同意していきます。そして、なくなった物を通じて世界は複雑に絡み合って構築されていることに気づき、哲学的になっていくのです。
主人公と一緒に便利な物や大事なものがなくなった世界を想像し、哲学してみて下さい。
私は、主人公が『死ぬときに後悔するのだろうか?』、とつぶやいたことに対して悪魔が返した言葉、
『人間というのはとかく、選んだ人生から選ばなかった方の人生を眺めて、羨ましがったり後悔したりしている生き物ですから』
というのが心に残りました。やっぱり、後悔しちゃいますよね。